D.D.S. Keisuke Haba INTERVIEW FEBRUARY, 2020
羽場敬祐先生(医療法人社団敬天会 ケイデンタルクリニック奥沢 理事長/歯科医師)
× 山村俊介(SOCALE 代表/デザイナー)
商店建築増刊「DENTAL SPACE DESIGN」に掲載されたケイデンタルクリニック奥沢。もうすぐ7周年を迎える院長の羽場先生にお話をうかがいました。
山村:本日はユニット増設の打合せでお邪魔させていただきましたが、1年目にはコンサルルーム、2年目にはカードや保証書などの印刷物、3年目には法人化と開院準備から継続的にお手伝いさせていただきました。クリニックにおうかがいする度にいつもスッキリとした院内に驚いてしまいます。2、3年もするとものが増えて雑然としてしまうクリニックもあるのですが、お忙しい中どのようなことに気をつけていらっしゃるのでしょうか。
羽場先生:日々の治療に追われて後回しになることもありますが、患者さんの目に触れるものには特に気をつけています。便利なものはネットですぐに注文できますが、良いものを長く大切に使いたいと思っているので、間に合わせの物は買わないようにしています。ものが常に収納されていて表に出ていないと掃除がしやすく、医療施設にとって最も大切な清潔さを維持しやすいと思います。
山村:ケイデンタルクリニック奥沢では英語で「KEI Dental Clinic」というシンプルな看板だけにしています。ほとんどの歯科医院は大きな文字と歯のマークで少しでも多くの人に知ってもらいたいと考えているようですが、先生に不安はありませんでしたか。
羽場先生:看板よりも患者さんの感性に訴えるような医院をつくりたいと思いました。文字で表現はしていませんが、外部から見える空間全体が看板になっていると思います。大きな看板や待合室の掲示物、パンフレットなどの「歯科」を連想させるものが何も置かれていなければ、視覚から生まれる恐怖感を減らせると思うのです。患者さんからも歯科に来ている感じがしないと言われるのですが、住宅のような雰囲気でリラックスして治療を受けていただいているからだと思います。
山村:診察室は個室にはしませんでしたが、プランについてはいかがでしょうか。
羽場先生:無理に個室をつくる必要はなかったと感じています。今回は特診室にKAVOを設置しますが、隣のユニットと適度に距離がありプライバシーも保てているので、ドアをつける必要はないと思っています。狭い個室は圧迫感がでてしまい、密室によるトラブルも心配です。アシスタントとの連携を考えると個室にしないメリットのほうが大きかったと思います。かわりに待合室を広くとることができたので、キッズスペースがなくても子供たちは自宅のリビングのようにくつろいでいます。
山村:最後にこれまでのソケールの仕事ぶりについてはいかがでしたでしょうか?
羽場先生:山村さんにデザインを任せることでいろいろなチャレンジもしていただいたと思います。今になってもパンチングメタルのパーティションはよく思いついてくれたなと感心しています。クリニックをインテリアデザイナーに頼むというと、デザインしましたというギラギラした空間になりがちですが、山村さんのデザインにはそういうものがない。そして、この物件に必要だった空間を中からも外からも美しく見せる仕掛けがありました。この物件は山村さんにデザインを依頼してから、自分の足で探した物件だったので、物件とインテリアのデザインがしっかりと噛み合ったのが本当によかったと思っています。
山村:こちらのクリニックを実際にご覧になってデザインのご依頼をいただくことが何度もあり、丁寧に使っていただいて本当にありがとうございます。掃除も徹底されていて、傘立ての底まで綺麗なのには驚きました。当時は歯科の実績も少なかったのに全面的にお任せいただいて本当にありがとうございました。これからもその期待に応えれるようにがんばります。本日はどうもありがとうございました。